日本に音楽療法士を! 養成の日々 ①
茨城での14年間のアスリートケアを終えて私は埼玉で身内の専門学院を手伝うこととなりました。かなり迷いましたが東洋医学(鍼灸)も行っていた私には、「音楽療法」というものにかなり興味を抱きました。同じ代替医療的な要素もあり、そして感性が大きく左右するセラピーなのでは?今後の時代にきっと必要なセラピーなのだろう!といった興味も重なったのです。音楽療法は精神科領域・高齢者領域・障害児そして成人知的障害など多くの領域で行われます。心理療法を基礎に置き音楽の特性を利用してセラピーを行います。私は専務理事として事務長的な役割でこの音楽療法を国家資格化へ持ち込めるように仕事をさせて頂きました。カリキュラムの設定や日々の学生対応など結構楽しい時代でもありました。特に国家資格化運動では担当の国会議員の議員会館や厚生省へ出向いたりしました。当時は公明党の沢たまきさんが音楽療法を非常に応援してくれており学院にも見学に来てくれました。沢たまきさんの事務所で会合の際には、学会役員や他校の担当者には目もくれずに私どもを傍に座らせてくれましたね。当時は衆議院・参議院の国会議員で「音楽療法国家資格推進議員連盟」が結成されており、議員立法での国家資格化を狙って運動しておりました。この時期、吉川学院長とは何度となく議員会館や厚生省に出向いたり思い出深い日々を送りました。
小泉政権の構造改革の影響が大きく「民間でできることは民間で!」という流れでしたので新たな国家資格の設置は大きな壁が立ちふさがっていたのです。
音楽療法で変わる人々 ②
音楽療法によって変化していく人たちを多く見てきましたので、その効果を実感しています。疾患により他者とのコミュニケーションに障害がある精神科の方が他者との関わりが可能となったり、注意が散漫で多動のお子さんが場面場面で落ち着きを見せ相手のアイコンタクトに反応するようになったり、認知症の老人が音楽療法の回想法によって過去の出来事を話し出し、これにより脳が活性化し認知症の悪化に歯止めをかけるなど数多くの効果が生まれています。近年では、不登校や引きこもりへの対応、産科領域での応用など領域の幅も広がっています。音楽療法は、西欧で発展してきたセラピーで特に第二次大戦後の兵隊への心理療法で盛んになりました。特に西欧では終末期医療(ホスピス)においても盛んに取り入れられています。日本は、これからまだまだ発展していく段階です。しかし、日本で国家資格化するには、エビデンスという壁が立ちふさがります。実際の治験でデータを示し効果を実証することです。実際に学院でも学生に毎年インターン実習させながら症例を論文として発表させ研究実績を残すようにしていました。こうした成果が周辺資格領域の方々(看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚療法士)etc・・・特にドクター達をも納得させるほどのデータが必要なのです。科学的なエビデンスが求められるのです。音楽療法は心理療法の一種でもあるので『評価』を数値化し効用を具現化し且つ説得力がなくてはいけません。これまでに国内でも多くの報告が集まっていますが、国家資格化は自民党から民主党に政権が移ったことでまた時間が必要となりました。民主党でも議員連盟を組織して頂き発展的な意見を頂いていましたがまだまだ問題山積という状況でした。しかし、実際に音楽療法を受ける方々からは強い要望があるので今後はこの受益者たる方々から国への意見がさらに強まることで国も何らかの動きに変化する可能性は充分あると思っています。